中小企業のためのDX事例

コラム

「地域と共に歩む芝園開発:デジタルが変える放置自転車対策」


 芝園開発株式会社は、駐輪場や駐車場の管理業務を中心に、都市の放置自転車対策など、さまざまなサービスを提供している企業です。1998年には、日本初の無人機械式個別管理時間貸し駐輪場システムを導入し、業界に大きな影響を与えました。しかし、2006年に主力の駐車場事業がガソリン価格の高騰や過当競争などにより厳しくなり、その状況を打開するため、新たな価値創造やビジネスモデル構築を目的に、デジタル技術を活用した事業転換を積極的に推進しました。
 その取り組みの一つが、15年に開発された放置自転車対策システム「Capture」です。自治体が管理する放置自転車の発見から返還・処分までのプロセスを一元管理するこのシステムは、現場スタッフがタブレットやスマートフォンを使って操作しやすいように設計されています。特に、現場スタッフの多くが高齢者であることから、操作の簡便化を重視し、音声入力やカメラガイド機能を搭載しています。これにより、IT機器に不慣れなスタッフでもスムーズに利用できるようになりました。さらに、放置自転車の位置情報や作業の進捗(しんちょく)状況をリアルタイムで共有することで作業効率が飛躍的に向上し、大きな成果を上げています。例えば、東京都港区ではこのシステムの導入により放置自転車の台数が51.4%減少しました。さらに、システムのリリース後も、現場からのフィードバックを基に改良が続けられており、重たいタブレットからスマートフォンに切り替えるなど、より使いやすいシステムへと進化しています。
 また、「LIXTA」というブランドを通じて、より広範な社会課題を解決する取り組みを行っています。駐輪場や駐車場の管理システムだけでなく、広範な施設管理業務をサポートするデジタルソリューションを提供してきました。データに基づいた運用を実現し、施設の利用状況をリアルタイムで把握することで、効率的かつ効果的な管理が可能となり、管理コストの削減とサービスの質の向上に貢献しています。また、施設の特性に応じたカスタマイズが可能であり、柔軟な対応力がLIXTAの大きな特徴です。
 同社は、デジタル技術を活用して業務運営の効率化とサービス品質の向上を同時に実現していますが、その取り組みにとどまらず、地域社会や自治体との連携を強化し、新たな価値を創造しています。これらの取り組みにより、社会課題の解決に貢献し、さらに成長を続けることが期待されています。
(この事例は筆者取材時のものであり、現在では異なる場合があります)

ウイングアーク1st株式会社 データのじかん主筆

大川 真史

 

◇大川 真史/おおかわ・まさし

 ウイングアーク1stデータのじかん主筆。IT企業を経て三菱総合研究所に12年間在籍し、2018年から現職。専門はデジタル化による産業構造転換、中小企業のデジタル化。オウンドメディア『データのじかん』での調査研究・情報発信が主な業務。社外活動として、東京商工会議所ものづくり人材育成専門家WG座長、エッジプラットフォームコンソーシアム理事、特許庁I-OPEN専門家、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会中堅中小AG副主査、サービス創新研究所副所長など。i.lab、リアクタージャパン、Garage Sumida研究所、Factory Art Museum TOYAMA、ハタケホットケなどを兼務。各地商工会議所・自治体での講演、新聞・雑誌の寄稿多数。近著『アイデアをカタチにする!M5Stack入門&実践ガイド』。