「気になる消費のキーワード『ほったらかし』」
少年ジャンプのデジタル版「少年ジャンプ+」に、『ほったらかし飯』という連載漫画があります。一人暮らしの働く女性が、ビンゴで当たった炊飯器一つで、白飯だけでなくおかずも同時にできる料理づくりに挑戦するというストーリーです。レシピ紹介のアイデアとともに今どきの生活スタイルの提案になっていて、興味深く読んでいます。
「タイパ」という言葉を聞いたことがあるかと思います。コストパフォーマンスを略してコスパというように、かけた時間に対して得られるものの効率をタイムパフォーマンスと考え、それを略したものです。よく引き合いに出される例として、動画を楽しむ若い消費者は、普通に見るのが時間の無駄だと考えて、早送りをしながら見るそうです。確かに地上波のテレビ番組を見ていると、CMの前に展開を出し惜しみしたり、CMの後にもCM前と同じ映像を流したりする手法が定着しています。さすがに得られる情報量に対する時間効率が悪いと感じます。
タイパの考えがさらにエスカレートしたものが「ほったらかし」ではないか、と私は考えています。この言葉が気になったのは、このキーワードで説明できるヒット商品がいろいろな分野で登場してきたからです。パスタを折ってソースが入った袋に入れ、電子レンジにかけてつくるスパゲティや眠っている間に体調を整えてくれる乳飲料など、その商品のメリットを享受するために消費者は特に何もしないでいいというコンセプトです。
さまざまな技術の進歩が、こうした”手間いらず”の消費スタイルを手助けしています。食品だけでなく、例えば電子レンジ自体も、冷凍食品の解凍と冷蔵の総菜の温めを同時にできる機能を持ったものが登場しています。とりあえず温めたいものはまとめてレンジにかければ、後は細かい調整をしなくても自動でやってくれるというものです。
投資信託やゲームの分野でも、利用者は特に何も指示や操作をせず放置しておくだけで成果が出るものが昨年のヒット商品ランキングに入っています。また、今年以降のヒット予測の中にも、微細な泡を発生させてお湯を使うだけでキッチンや風呂などの水回りの汚れを防ぐ給湯器などが挙げられています。これも、利用者があえて何かしないでも、ほったらかしで自動的にご利益が得られる商品だといえます。
「ほったらかし」が、複数のことを同時にこなす「ながら」と違うのは、一つの作業は完全に機械などに任せてしまい、その間はほかのことができる点です。「ながら」は自分がうまくやらないと成果が得られないリスクがありますが、「ほったらかし」は、一つのことは失敗しないで確実にこなし、同時に自分のやりたいことにも時間を使うという考え方です。
富裕層と一般消費者層、一人の生活の中でも高級な嗜好(しこう)品と安い日用品が使い分けられるように、消費の二極分化、二面化が進んでいます。「ほったらかし」は、生活の中で時間の使い方が二極分化を始めている現れかもしれません。
日経BP 総合研究所 上席研究員
渡辺 和博

◇渡辺 和博/わたなべ・かずひろ
日経BP 総合研究所 上席研究員。1986年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年日本経済新聞社入社。IT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の自治体・商工会議所などで地域活性化や名産品開発のコンサルティング、講演を実施。消費者起

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