トレンド通信「2024年問題と2025年問題、ピンチをチャンスに変えられるか」

コラム

能登半島地震で被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

 波乱の幕開けとなった今年、働き方改革に端を発した2024年問題がクローズアップされています。特に経済への影響が大きいと考えられている物流関係について、小売業界の人からは悲壮な声が聞こえてきます。例えば東京都市部に売り場を持つお店なら、これまで注文後翌日の午前中に届いていたものが翌々日に届くかどうか、という状況になりそうです。冷凍・冷蔵技術が進化している魚介類はまだしも、果実や野菜などでは、鮮度が必要なビジネスは成立しにくくなるようです。

 新たに生じる時間差は、業種・業態によってはビジネスモデルの変革を迫ります。近年コンビニチェーンが店頭で調理したものを多く提供しているのは、セントラルキッチンから調理済み商品を提供する物流の仕組みが今後維持できなくなることを見越しています。

  一方で、消費者から見ればつくりたてがコンビニで買えるのは、価値が向上したともいえます。また、一次産品を都市部に提供していた地方から見れば、本当に鮮度の良いおいしいものは地方を訪ねて味わうしかないことを、逆に人を呼び寄せるチャンスだと捉えることもできます。みんなに逆風が吹くときは、新たな挑戦や知恵を出したものが抜け駆けをするチャンスだともいえるのです。

 来たる2025年には人口が多い団塊の世代が75歳以上になる、2025年問題が待ち受けています。働き手が減り、社会負担が増え、経済全体が弱体化する要因になると考えられています。年齢構成の話なので、法の施行による2024年問題とは違って変化は緩やかに起きます。

 先日とある地方の工務店から、高齢者が資産を使って、残された家族のためにコンパクトで利便性の高い住宅を建てるケースが増えているという話を聞きました。平屋のバリアフリーで、身体能力が衰えてきても快適に暮らせるようなサイズと設備を備えたものが望まれるそうです。これまでのファミリーが住宅を買う・建てるのとは全く違う市場の出現とも捉えられます。おそらくさまざまな分野で、これまでは全く必要とされなかった新しいシニア向けのニーズが発生するのだと思います。

 過疎と高齢化は地方がより進んでいますから、市場構造の変化は地方で先に起こり、シニア向けの新しい商品は地方の中小事業者から生まれるのかもしれません。そんなことを感じさせる事例の一つに、高知県の老舗乳業メーカーが発売した、とろみ付きミルクがあります。80~90歳をターゲットに誤嚥(ごえん)を防ぐため、あらかじめ適当なとろみを付けています。牛乳にとろみを付けるための添加剤はこれまでにもありましたが、最初から高齢者向けと割り切ってとろみを付けたミルクは無かったようです。これは高齢化に直面する地方ならではの商品開発。このようにピンチはチャンスに変わる可能性も感じられます。


日経BP総合研究所 上席研究員 渡辺 和博

 日経BP総合研究所 上席研究員。1986年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年日本経済新聞社入社。IT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の自治体・商工会議所などで地域活性化や名産品開発のコンサルティング、講演を実施。消費者起点をテーマにヒット商品育成を支援している。著書に『地方発ヒットを生む 逆算発想のものづくり』(日経BP社)。