職場のかんたんメンタルヘルス「マイナス感情を味方にしよう」

コラム


 怒り、不安、悲しみなど、いわゆるネガティブな感情を、良くないものだと思っていませんか。基本的には、心地の良いものではないので、このような感情が湧くと、「こんなことを考えてはいけない」「こんなふうに思うのは自分が悪いのだ」と自分の気持ちを抑圧してしまう人が多いと感じます。それは、何とか不快な感情から逃れようと、自分の心を守るための防衛反応でもあるのですが、自分の感情を無視したり、否定したりすると、ますますそのネガティブで強い感情を手放せなくなる、「強化」という状態を引き起こす傾向があります。つまり、忘れようとすればするほど、とらわれてしまうという悪循環を生むのです。早い解決を望むなら、その気持ちと向き合うことが必要です。疲れていたり、忙し過ぎたりすると、向き合うエネルギーが保てないことが多いので難しいかもしれませんが、意図的に取り組むことが重要です。まずは、自分自身の気持ちに正直になることです。「怒り」なら、「あいつ本当にムカつく」と怒りを自覚すること。「悲しみ」なら、とことん悲しみに浸るのです。そして行動に移しましょう。

 怒りは、2次感情といわれるもので、それを引き起こす1次感情が必ず存在します。何に対しての「怒り」なのかを把握した時点で、ある程度気持ちの整理ができます。その上で、客観的な対処ができると良いですね。

 「悲しみ」は、時間薬が必要ともいわれるように、時間がかかることも多いですが、「泣く」という行動や、誰かに話すことでも癒やされます。不安や心配は、未来や未知のことに抱きやすく、起こっていないことへの予期不安なので、何らかの準備をすれば軽減されることが多くあります。

 このように、マイナス感情を自覚して行動に移すことで、辛い気持ちから早く解放されやすくなります。ネガティブな強い感情にとらわれているときは、動けなくなることが多いので積極的に行動することを意識しましょう。

 意識的に抑え込んだ感情は、よどみのように心の底にたまっていき、自分が向き合わないでいる感情は、時とともに自覚できなくなり、制御できないものへと変化します。そうすると、対処の方法が見つかりづらく、何だか分からない不安や怒りにとらわれやすくなってしまうのです。そうなる前に、しっかりと自分の気持ちと向き合いましょう。

                     日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

◇大野 萌子/おおの・もえこ

 法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか多数。