トレンド通信「よさこい祭りから感じた地域イベントの未来像」

コラム


 8月9日から12日に高知で開かれた第70回よさこい祭りを訪ねてきました。新型コロナの影響で、4年ぶりの本格開催となりました。157チーム、1万4000人が踊り、観光客も多く詰めかけて、まち中に「よっちょれ!よっちょれ!」の掛け声とよさこい節の音楽が響き、大変な盛り上がりでした。

 国内のみならず、海外からの観光客も多く、ホテルはどこも満室。私も予約が取れず、友人宅に泊めてもらったほどの混み具合でした。こうした祭りは地域に活気や、経済的な潤いをもたらすほか、地域の人々の誇りやプライドを育てていることを実感しました。

 一方で、3年間の空白は、地方の祭りが抱えるさまざまな課題を明瞭に浮かび上がらせていたとも感じました。人口減少による担い手不足や高齢化、資材などの高騰による運営サイドの財政面の負担増です。開催間隔が空いたことで、メンバーが入れ替わる大学生チームでは、祭りに関するノウハウがうまく後継世代に伝承されないといった問題もありました。

 地元メディアがさまざまに報じていた課題の中には、4年ぶりの開催でこれまで以上に意気込む地元と、久しぶりの参加でメンバー集めに苦労する県外からのチームの間に、規模や準備の面で温度差が生じていたという問題もあったようです。

 高知のよさこい祭りに限らず、地方の祭りはどこも同じような課題を抱えています。祭りには、運営サイドと参加者(よさこい祭りでは踊り子)、観覧客と三つのタイプの人が関わっています。この3方向のそれぞれに、人口減少やそれに伴う地域経済の縮小などの問題が影響します。このままでは地方の祭りは、かつての隆盛を誇った時代の規模ややり方を維持し続けることは難しいでしょう。

 対応策の一つとして、全国各地の祭りでは、さまざまな場面でITやデジタルの力を借りて、効率的な運営や来訪者に対する新たな価値を伝えるといった試みが始まっています。いわば祭りのDX化です。例えば来訪者にはスマホのアプリを通じて、見どころやライブ動画を提供する、従来は紙と郵送ベースだった参加者の登録やそれに対する情報共有をデジタル化することなどです。青森のねぶた祭では、極彩色でつくられるねぶたのデザインを一つの作品として、デジタル技術を使ってアート作品として販売したり、信州の御柱(おんばしら)祭では有料のライブ配信が実施されたりしています。

 伝統の継承の面では、過去の祭りを記録した映像や古い写真などを集めてデジタルアーカイブをつくり、後世に伝える活動をしている例もあります。

 こうしたデジタルの力を利用して、地域の人たちによる効率的な運用を追求するだけでなく、いかに地域の外にあるヒト、モノ、カネ、情報を地域に取り込むか。持続可能な収益モデルをどうつくるか。祭りという地域文化に根差した公共性の高いイベントを通じて、地域外との関係を構築し持続できる仕組みをつくることが求められています。

日経BP総合研究所 上席研究員 渡辺 和博

 日経BP総合研究所 上席研究員。1986年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年日本経済新聞社入社。IT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の自治体・商工会議所などで地域活性化や名産品開発のコンサルティング、講演を実施。消費者起点をテーマにヒット商品育成を支援している。著書に『地方発ヒットを生む 逆算発想のものづくり』(日経BP社)。