気象予報士×税理士 藤富郷のクラウドな話

コラム

「雲海は運ではない!?」


 先日、埼玉県秩父市で雲海を見るツアーに参加しました。秩父は周囲を山に囲まれた盆地で、雲海の名所です。まちなかで発生するため、雲海と夜景の光が合わさった光景を楽しむことができる場所でもあります。夏で雲海の発生がなかなか難しい季節でしたが、ツアー前日に雨が降り、気温も下がって条件が整ってきたので期待していました。日の出前の薄明かりの中、階段を上り展望台にたどり着くと、そこには秩父のまち並みが広がっていました。うっすらとベールに包まれた感じはありましたが、雲海というには程遠く……。風は弱かったのですが、風速が1m/sを超えていたのが気になっており、もっと「なぎ」のような時でないと雲海は発生しないのだなと実感しました。
 雲海は、高い所から見下ろした時に、下に広がる雲が海のように見えるものです。兵庫県の竹田城跡が、雲海の上に顔を出す「天空の城」と呼ばれるようになり、雲海ブームとして広がっていきました。北海道のトマムや広島県の三次(みよし)などの盆地、岡山県の備中松山城などの谷筋にある山城など、周囲が山で囲まれた地形では、雲海が発生しやすくなります。
 雲海が発生する条件は、「空気中に水蒸気が多く、湿っていること」や「熱が上空に逃げていく放射冷却現象により、地面付近の空気が冷やされること」などがあります。雨が降った後、深夜から早朝にかけて晴れて冷える日はこれに当てはまり、出現率が高まります。そして、「風が弱い」ということも大切な条件の一つです。
 平野の真ん中に住んでいると、近くに山がないため日々の生活で雲海を体験することができません。旅に行かないと見ることができないと思うと、行った時に雲海が発生するのかどうか気になります。
 雲海が見られるのは”運”だと思われがちですが、ある程度、予測が可能です。発生の条件を踏まえると、前日の露点温度(空気中の水分が結露する温度)より朝の予想最低気温が低いこと。それに加えて、朝に晴れて風が弱い予想の時は期待してもよいと思われます。
 そうはいっても明け方、山道を登る途中はドキドキしますよね。条件がそろっていたとしても、展望台に着くまでは見えるかどうか分かりません。その分、雲海に出合えた瞬間の感動は忘れられないものです。天守閣から雲海を見下ろす城主になって、雲の合間から麓の様子をうかがい、朝日が昇るのを待つ姿を想像したくなります。
 雲海は、日の出とともに次第に消えていきます。秋は雲海の発生率が高くなりますので、早朝に雲海のロマンを感じてみるのもいいですね。

気象予報士兼税理士
藤富 郷

◇藤富 郷/ふじとみ・ごう

 気象予報士、税理士。埼玉県三郷市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。大学院在学中に気象予報士に登録。日本テレビの情報番組に気象キャスターとして出演しながら税理士試験に合格し、2016年に開業。21年に越谷税務署長表彰受賞。趣味の鉄道では、鉄道イベント出演や時刻表、鉄道模型雑誌にコラムを寄稿。プログラミングやダムにも造詣が深く、”複業”として得意を組み合わせて幅広く活躍中。地元の「三郷市PR大使」を務めるなど、地域との関わりも深めている。