中小企業のためのDX事例

コラム

「鋳造現場をIoTとデータ活用で進化させるアサゴエ工業の戦略」


 アサゴエ工業株式会社は、岡山市に本社を構える鋳造メーカーで、IoTを活用した生産性と品質向上に取り組んでいます。1957年の創業以来、建設機械や自動車部品の製造を主力事業とし、金型製作から鋳造、精密加工まで一貫体制を構築してきました。この長い歴史の中で培った技術力にデジタル技術を融合させ、業界が抱える課題に挑戦しています。
 同社のIoT活用の特徴は、現場主導のアプローチにあります。現場の社員たちの意見を積極的に取り入れ、具体的な課題に応じたツールを活用しています。その一例が、小型IoTデバイス「Nefry」を活用したデータ収集で、数千円で実現しました。この技術により、設備の稼働状況やサーバールームの温度など、従来では取得が難しかったデータを効率的に収集。現在では「M5Stack」などのデバイスも導入し、さらなるデータの取得・活用に取り組んでいます。
 同社が目指すデジタル化は、単なる業務効率化にとどまりません。1400~1500度の高温や粉じんが舞う過酷な環境でも機能するIoT技術を駆使し、これまで職人の勘や経験に頼っていた工程を可視化。これにより、品質向上だけでなく、熟練技術者のノウハウを次世代へ継承する基盤を築いています。また、デジタル化のプロセスを通じて社員のスキル向上と意識改革を推進。現場の改善活動にIoTを融合させたことで、生産量の向上や業務負荷の軽減を実現し、チーム間での競争意識も生まれています。この好循環が、デジタル化推進をさらに加速させています。
 これらの取り組みは、鋳造業という「ローテク」のイメージを覆すものであり、業界全体に新たな可能性を提示しています。同社の挑戦は、製造業におけるIoT化やデジタル化の先行事例として注目されています。
 さらに、代表取締役社長である藤原宏嗣氏は、2018年から日本鋳造協会のIoT推進特別委員会の委員長を務め、24年からはDX推進委員会の委員長として活動しています。藤原氏は、自社の取り組みにとどまらず、業界全体のデジタル化をけん引。IoTやクラウドサービスなどのデジタル技術を活用し、生産効率化や品質管理の向上を目指しています。
(この事例は筆者取材時のものであり、現在では異なる場合があります)あり、現在では異なる場合があります)

ウイングアーク1st株式会社 データのじかん主筆

大川 真史

 

◇大川 真史/おおかわ・まさし

 ウイングアーク1stデータのじかん主筆。IT企業を経て三菱総合研究所に12年間在籍し、2018年から現職。専門はデジタル化による産業構造転換、中小企業のデジタル化。オウンドメディア『データのじかん』での調査研究・情報発信が主な業務。社外活動として、東京商工会議所ものづくり人材育成専門家WG座長、エッジプラットフォームコンソーシアム理事、特許庁I-OPEN専門家、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会中堅中小AG副主査、サービス創新研究所副所長など。i.lab、リアクタージャパン、Garage Sumida研究所、Factory Art Museum TOYAMA、ハタケホットケなどを兼務。各地商工会議所・自治体での講演、新聞・雑誌の寄稿多数。近著『アイデアをカタチにする!M5Stack入門&実践ガイド』。