職場のかんたんメンタルヘルス

コラム

「電話の良さを見直そう」


 いつの頃からか、「電話はオワコン(終わったコンテンツ)」といわれるようになりました。マルチタスクに追われ、人手も少なく余裕がない状況で、お互いが時間を合わせなければ用をなさないツールを排除する方向に向かうのはある意味自然です。いつでも気兼ねなく送れて、相手も自分のタイミングで開封できるメールが台頭しているのですから、なおさらです。
 「相手の時間を奪う」と揶揄(やゆ)される電話ですが、果たしてそうでしょうか。実は、メールのやりとりにこそ膨大な時間がかかっていることを見逃してはなりません。一日の業務の半分は、メールの返信に明け暮れているという話もよく聞きます。また、電話は文字だけでは伝えきれないニュアンスを共有するためには必要なツールです。特に、相手との行き違いがあったときには、何度も文字でやりとりするよりも、電話をかけて確認することであっさりと誤解が解けることがあります。
 さらに、文字ツールと比べて伝え合う情報量が圧倒的に多いというメリットもあります。一般的にスピーチ原稿は、1分間に約300文字を目安に作成するといわれています。それを基に考えると、数分間のやりとりで数千字の情報を伝え合えることになります。通常はそのような長いメッセージを送ることはありません。これだけ考えても情報量の差を感じていただけるのではないでしょうか。
 電話番号を大々的に不特定多数に開示するのは、理不尽なクレームや勧誘などに使われることにつながるなど、リスクが高くなります。しかし、交流がある人や取引先との電話の利用はむしろ、大量の情報を伝え合うことができるため、メリットの方が大きいと思います。基本的に、就業時間内(フリーランスであれば、あらかじめやりとりできる時間帯を共有しておくと良い)であれば、いつ電話をかけてもマナー違反になることはありませんし、手が離せないときは相手が出ないはずですので、そこまで気を使う必要はありません。ただ、電話は緊急時に使用するツールといった認識も強いことから、留守電になったら、一言用件を残しておく配慮ができると良いですね。
 若い世代を中心に、電話を敬遠する傾向にあると思いますが、コミュニケーションツールの一つとしてのスキルは、社内教育をしてでも残しておくことが大切です。

日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

 

◇大野 萌子/おおの・もえこ

 法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書にシリーズ51万部超『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか多数。