「傾聴」という言葉が市民権を得て久しく、職場でも相手の気持ちに添った聞き方を実践、もしくは心掛けている人が多いのではないかと思います。しかし、組織は指示命令系統で成り立つものでもあり、部下の気持ちをくんで「この仕事嫌なんだね? それなら、やらなくていいよ」というわけにはいきません。また、「君のやりたいことは何?」と確認したところで、その仕事を任せられるとも限りません。そうしたジレンマを感じているといった相談も多く受けます。
相談に乗る、悩みを聞くといった場面での傾聴は必要ですが、実は指示や指導にそれを持ち込んでしまうと、正確な指示が伝わりづらくなり、業務自体が滞る可能性が高まります。ですから、場面に応じて使い分けることが大切なのです。
また、気持ちを聞くといっても、相手が満足するまで長々と付き合う必要はありません。忙しくて時間が取れないことも多いと思いますので、「時間の構造化」といって、目安の時間を決めることが重要です。特に、相手が相談者に対して依存的になっているときは、話せば話すほど不安になっていく傾向もあり、時間が決まっている方が安心です。カウンセリングで時間の枠を設けているのはそのためでもあります。
聞く側も、いつまでも終わらない話を聞くとなると、集中力がそがれますから、お互いにとって良い方法です。「これから20分話を聞くね。それで終わらないようなら、改めて時間を設けよう」といった声掛けができると良いかと思います。そして、「聞く」ことに徹するためには、相手が話した内容の確認を心掛けてください。「ああそうなのね」と聞き流すのではなく、「○○が△△なのね」と具体的な言葉で受け止めることが必要です。正確に受け止めると、話す側は「聞いてもらえた」という感覚が強くなりますし、聞く側の認識違いも修正できます。短い時間でも、こうしたやりとりは十分可能ですので、必要に応じて時間を決めて「気持ち」を聞く場を設定するのが、「聞く」ことを最大限に活用できるコツです。
日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか多数。
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