ITを事例からひも解く「システムは自社に合ったものを選ぶ?作る?」

コラム


 本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。

 IT活用のセミナーの講演にて、ある経営者の方から質問をいただきました。

「システムはIT企業にどういうのが欲しいか頼んで作ってもらうのですよね。お金も手間もかかりますよね」

 確かに、以前はITシステムの構築には時間もお金もかかりましたが、業務にフィットして手が届く距離になったのが10年前くらいからの大きな変化です。だからこそ「企業規模に関係なくIT経営を実行しましょう」「ITを使わずに不利になるのはもったいない」と強く言われるようになったのです。

 例えば会計業務や請求書の発行など形が決まっている業務は、使いやすく便利なITツールがたくさん提供されています。自社に合いそうなものを選んで導入するようにしましょう。

 では、各社異なる現場業務はどうすれば良いでしょうか。

 おすすめは、まず、1.現在提供されているITサービスやパッケージソフトが使えるかどうか調べてみる、フィットするものがなければ、2.ツールを使って自社内でシステムを構築する、それも難しければ、3.オリジナルのシステムをIT企業に発注する という順番です。

●急激に進化する業務のITツール

 例えば製造業においては、生産管理のITツールがよく利用されます。利用者の増加により特徴が出てきています。

 研究機関からの試作品を多く受注しているある企業では、一つの受注ごとに原材料、そして従業員の作業時間をもとにした人件費を統合的に管理して、利益がきちんと出ているか、改善点はどこかを見いだしたいと考えました。このような課題を持つ企業向けに開発された生産管理システムが見つかり、現在は利益の把握はもちろん、適正見積の作成にも役立てているそうです。

 対照的に、新しい事業を開発した場合や、業界の常識を飛び越えるビジネスを推進するときなどは、フィットするITツールが用意されていないことが多くなります。同じITを必要とする企業が少ないからです。

 その場合は、依頼してオリジナルのシステムを構築してもらうか、「FileMaker」「kintone」などのようなデータベースツールを活用し、社内で発生するデータとその流れを整理して自社用のアプリケーションを作るという選択肢があります。法人向けビジネスが主流の業界にもかかわらず新しく個人向けビジネスを始めた、ある会社では「kintone」を用いて受注から当日に向けての準備、サービス実施、請求までを一貫して管理するシステムを社内で構築し、新しいビジネスを軌道に乗せました。こうしたケースでは、システムの「お世話」ができる人材が必要となります。システムを少しずつアップデートしていくことも多いので、担当者が異動・退職しても問題が生じないように情報共有をしておきましょう。

 ITツール選びは、自社の課題はどこにあるかを明確にし、優先順位をつけることが大切です。商品・サービスそのものが売りなのであれば、業務効率化や利便性を高めるITツールを入れて価値創造に時間を投下。仕組みやビジネスモデルに特徴があるなら、ITにも独自性を求めていきましょう。

 

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【事例からヨミトル】

・様々な業種、業務で使えるITツールが増えています。優先取り組み課題が整理できたら、今どんなツールが提供されているか、探してみましょう。

・ビジネスの仕組みに独自性が高い場合は、データの流れを整理し自社内でシステムを構築する選択肢があります。

                   IT経営マガジン「COMPASS」編集長  石原 由美子

 アップコンパス代表。教材編集や講師業を経て、情報処理技術者試験の書籍編集、モバイル分野の雑誌編集を担当した後、IT経営マガジン「COMPASS」https://www.compass-it.jp/の編集に携わる。中小企業支援機関・支援者と連携しながら、中小企業が主体となる等身大のIT活用をテーマに、全国の事例を取材し、その本質を伝えている。各地の商工会議所においても、IT活用事例・DX入門等のセミナーを担当。