仕事をしていく上で「『ロールモデル』は必要だ」と考えている人がとても多い気がします。実際に「ロールモデルが見つからない」という悩みや、「ロールモデルがいない職場なので辞めようかと思う」などの相談はよくあります。ロールモデルが必要だと考える理由は、仕事のやり方をはじめ、「自分の将来を思い描く対象として、具体的な象徴になること」にあるようです。手探りで物事を模索している人にとって、それは解決策のように感じるのかもしれません。確かに、目標や理想とする人物像があることは、それを目指して頑張るというモチベーションを保つためには、一定の効果がありそうです。
ただ、リスペクトできる素晴らしく有能な上司がいたとして、「あの人のようになりたい」と思ったときに、同じように業務をこなし、同じように業績を上げ、評価されることができるでしょうか。年齢、経歴、家庭環境、そのほかにもさまざまなことを「自分とは異なる人物」と同じようにすることは難しく、結局「自分はダメだ」と自己否定することにつながってしまうケースが残念ながら多く見受けられます。自信を喪失するきっかけにもなりやすいので要注意です。
時代背景も刻々と変わり、業務内容も変化しています。そのような中で、「前例に基づき、こうすれば大丈夫」と今までと同じことをしても、うまくいきません。柔軟な変化が求められている昨今、「ロールモデル」の存在はデメリットにさえなります。
しかし、特定の人に憧れることを否定するわけではありません。ロールモデルは、1人に限定せずに「○○さんのこの部分は取り入れよう」「△△さんのこの姿勢はまねしたい」と、それぞれの「いいとこ取り」を目指すことが健全な方法です。
また、身近な人物だけでなく、成功を収めた著名人を目標としている人もいると思います。共感し、高い志を持つことは素晴らしいことです。しかし、そのやり方や考え方をそのままではなく、「自分事」として落とし込む作業が必要です。実現可能なところまでアレンジできてこそ結果につながり、やりがいや自信に結び付けることができます。

日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子
◇大野 萌子/おおの・もえこ
法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか多数。
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