中小企業のためのDX事例

コラム

「現場の小さな困り事解決アイデアワークショップ」


 栃木県下野市などに工場を構える神戸化成工業株式会社は、プラスチック成型を主力とする従業員約80人、売上高約20億円の製造業です。
 同社が近年力を入れているのが、現場起点のデジタル化への取り組みです。まず着手したのが、生産日報の電子化と製造工程の可視化・分析ツールの導入でした。これまで手書きで行っていた生産日報をタブレット端末に入力することで、手書きとシステムへの二重入力がなくなり、データ入力作業効率化とリアルタイム情報共有を実現しました。また、製造工程の可視化・分析ツールを導入し、稼働状況の正確な把握と、データに基づいた効率的な改善活動が実施できるようになりました。
 こうした取り組みを土台としデジタル化を加速させるために、デジタル化アイデアワークショップを開催しました。「自分事から考え、身の丈から始める、デジタル変革」をテーマに掲げたこのワークショップでは、経営層から現場作業者までが一堂に会し、それぞれの立場から業務改善のアイデアを出し合う場となりました。
 参加者からは、日々の業務の具体的な課題に基づいた実践的なアイデアが提案されました。例えば、材料や成型後の製品を置く場所を明確にする所在可視化や、不良発生時にボタンを押すだけで緊急度と原因が共有できるツール、トラブル発生時の音声案内、生成AIを活用したメール作成の効率化、モーター付き台車による運搬の省力化、正門開閉の自動化といった提案です。現場のちょっとした困り事こそが、デジタル化の起点になることを再認識する機会となりました。
 神戸化成工業が目指すのは、「特別な技術者がいなくても、現場が自ら考え、改善を続けられる仕組みづくり」です。神戸泰社長は、「変化できない企業は生き残れない」と語り、大掛かりなシステム導入ではなく、身近な課題から着実に取り組む姿勢を大切にしています。
 今後は、ワークショップで生まれたアイデアを具体的な施策として実行に移し、さらなる効率化と働きやすい現場づくりを進める方針です。現場の小さな困り事に耳を傾け、デジタル技術を「自分たちの力」に変えるこの取り組みは、地域の中小製造業にとっても大きなヒントとなるでしょう。
(この事例は筆者取材時のものであり、現在では異なる場合があります)現在では異なる場合があります)

ウイングアーク1st株式会社 データのじかん主筆

大川 真史

 

◇大川 真史/おおかわ・まさし

 ウイングアーク1st データのじかん 主筆。IT企業を経て三菱総合研究所に12年間在籍し、2018年から現職。デジタル化による産業構造転換や中小企業のデジタル化に関する情報発信・事例調査が主な業務。社外活動として、東京商工会議所ものづくり人材育成専門家WG座長、特許庁I-OPEN専門家、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会中堅中小AG副主査、サービス創新研究所副所長など。リアクタージャパン、Garage Sumida研究所、Factory Art Museum TOYAMA、ハタケホットケなどを兼務。経団連、経済同友会、経産省、日本商工会議所、各地商工会議所・自治体での講演、新聞・雑誌の寄稿多数。近著『アイデアをカタチにする!M5Stack入門&実践ガイド』。