「部下の声に寄り添う」
部下との関係性を良くしたいと、良かれと思ってやっていることが、実は関係を悪くしているケースがあります。部下の声をしっかり受け止めたいと思えば思うほど、空回りしてしまうなどという現場の声も多く聞かれます。
例えば、部下から「こんなことがあって本当に困りました」という話を聞いたとします。その気持ちに寄り添うつもりで、即座に「分かる」と言ってしまうことはないでしょうか。このような反応が相手を理解する適切な対応と捉えてしまう人が多いのも事実です。しかし、それは相手の気持ちではなく、相手の話を聞いたときの「自分の気持ち」を示したものにほかなりません。
自分の経験と、相手の話の内容が「同じような場面や状況」と合致したときに「分かる」と表現するわけです。しかし、「同じような」体験や出来事であっても、完全に「同じ」ということはなく、それと同様に相手と100%「同じ気持ち」には決してなりません。その人その人が出合うことやそのとき感じる気持ちは、一つとして「同じ」ものは存在しないのです。それにもかかわらず、いかにも全てを悟ったように「分かる」という表現を使うことは、「分かったような」錯覚に陥ることを指します。
相手との信頼関係が希薄な場合は、「本当に分かっているのか?」と不信感を抱かれることにつながり逆効果になりますし、反対に正確な内容をやりとりしていないにもかかわらず、お互い「分かったような感覚」になってしまうのも問題です。本当の理解が進まないと、根底のところで平行線をたどってしまいます。すると、「あれ、分かってもらえていなかった」と、どこかで相手との関係性に破綻が生じます。そうすると、きちんと向き合ってもらえていなかったという不満から、反発心が生まれやすくなります。
ですから、職場で安易に「分かる」という言葉を使わないことが大切です。「どんな状況だったのか」と、相手の話を促すような言葉掛けでよく事情を聞き、具体的な対応を伝えることが、本当の意味で相手の声に寄り添うことにつながります。じて、心身ともに健康に夏を乗り切りましょう。
日本メンタルアップ支援機構 代表理事
大野 萌子

◇大野 萌子/おおの・もえこ
法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書にシリーズ51万部超『よけ
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