「秘境駅」という言葉をご存じでしょうか。人里離れた所にある駅のことをいい、そこは林の中だったり、広大な草原の中だったり、列車に乗っているとなぜここに駅があるのだろうと驚く所にあります。
誰が利用しているのかなと感じるのですが、元々は意味があって駅がつくられていました。時代が進むにつれて集落がなくなったり、近くに高速道路ができて鉄道を使わなくなったりするなど、利用者が極端に減り、駅周辺の雰囲気が変わったのです。今は秘境駅の周りには民家がないことが多く、アクセスする道がない駅もあり、訪れるのが困難な場合がほとんどです。鉄道で行こうにも、普通列車でも通過してしまうことが多く、本数が少なくなっています。ただ、その困難さが秘境駅に引き付けられる魅力にもなっています。
秘境駅を初めて訪れたのは大学生の時で、飯田線の田本駅です。この駅は、秘境駅の多い飯田線の中でも有数の秘境感がある駅で、天竜川の渓谷の崖に沿ってへばりつくようにホームがあります。駅からは獣道のような山道が続き、20分ほど歩いてみても全く家や人の気配はありません。駅に戻っても次の列車まで3時間ほどあり、ベンチに座ってぼーっとするしかありませんでした。仕方なくしばらく景色を眺めていたら、はっと気が付いたのです。駅から見える景色は人工物が全くなく、聞こえる音も川のせせらぎと鳥の鳴き声だけだったのです。普段生活する日常がどれだけ人のつくった物や音にあふれているのか、何もないからこそ気付かされました。まちの喧騒(けんそう)から解放され、身も心もリフレッシュできたのです。
そんな秘境駅ですが、利用者が少ないので、廃止になる駅が増えてきました。駅がなくなるのは寂しいものです。北海道の石北本線には、奥白滝・上白滝・白滝・旧白滝・下白滝と5駅続く区間がありましたが、次々と廃止になり、今は白滝駅のみとなっています。無人駅であっても保守・維持に経費がかかるからです。
それが、最近では秘境駅を観光に活用する所が出てきました。北海道の小幌駅は、豊浦町が管理することで存続しています。過度に手を加える必要はなく、そのままを保つだけでも個性的で、こうした観光の目的地になります。地元の皆さんがきれいにしてくれていると思うと、訪れた時にうれしく感じるものです。地域の魅力を伝える秘境駅。いつまでも大切にしたいですね。

気象予報士兼税理士 藤富 郷
◇藤富 郷/ふじとみ・ごう
気象予報士、税理士。埼玉県三郷市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。
大学院在学中に気象予報士に登録。日本テレビ「スッキリ」に気象キャスターとして
出演しながら税理士試験に合格し、2016年に開業。21年に越谷税務署長表彰受
賞。趣味の鉄道では、鉄道イベント出演や時刻表、鉄道模型雑誌にコラムを寄稿。プ
ログラミングやダムにも造詣が深く、“複業”として得意を組み合わせて幅広く活躍
中。地元の「三郷市PR大使」を務めるなど、地域との関わりも深めている。

