「確定申告の始まりと今」
春先は、確定申告で忙しい季節です。一年間の請求書や領収書などをまとめるのは大変ですよね。自己申告ではなく、国で税額を決めてくれたら楽なのにと考える人もいらっしゃるでしょう。実は、現在の確定申告の制度「申告納税方式」が始まったのは1947年からで、それ以前は国が税額を決定する「賦課課税方式」の形が取られていました。
賦課課税方式においても所得を申告する点は変わりませんが、申告した所得はあくまで参考程度だったようです。地域の有力者が納税者の代表として調査委員に選ばれ、「所得調査委員会」というものが設けられました。この委員会が、同業者全体のバランスを取りながら納税額を決定するという仕組みでした。
転機が訪れたのは、第2次世界大戦後の47年です。GHQの提言の下、米国税制に倣い申告納税方式に変更され、確定申告が始まりました。日本政府においても、自ら税額を決定し納付する申告納税方式は、戦後の税制の民主化や課税の公平性にとって好ましいと考えていたようです。加えて、激しいインフレが起こっていたため、自発的な納税を促す必要もあったのです。
これにより所得調査委員会も廃止になりましたが、新たに自己申告の正確さを測るため、申告書を誰でも閲覧できる「申告書の閲覧制度」、他人の申告書に誤りがあると通報できる「第三者通報制度」が導入されました。通報制度については、報奨金もありました。今では考えられませんね。やはり、この二つはプライバシー侵害や報酬を得るための密告が増えるのは好ましくないと判断され、54年までに廃止となりました。
こうした変遷の中、青色申告制度や記帳指導、税理士制度の導入などの税制改正も行われ、申告納税方式が現在まで続いています。
近年は、マイナンバーカードが普及し、給与所得や医療費などがデジタルデータになってきていますので、給与所得者の確定申告が簡単になりつつあります。
海外に目を向けてみると、特にIT先進国エストニアにおいては、確定申告の便利さで話題に上がります。税務署に多くの申告データが集められるため、すでに記入済みの申告書ができており、修正がなければクリックのみで完了するのです。
とはいえ、エストニアでも事業所得については資料をそろえ、個人で申告書に記入する必要があります。事業所得者はまだまだ大変ですが、年に一度は収入を振り返り、新年度の活力にされると良いですね。
気象予報士兼税理士
藤富 郷

◇藤富 郷/ふじとみ・ごう
気象予報士、税理士。埼玉県三郷市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。大学院在学中に気象予報士に登録。日本テレビ「スッキリ」に気象キャスターとして出演しながら税理士試験に合格し、2016年に開業。21年に越谷税務署長表彰受賞。趣味の鉄道では、鉄道イベント出演や時刻表、鉄道模型雑誌にコラムを寄稿。プログラミングやダムにも造詣が深く、”複業”として得意を組み合わせて幅広く活躍中。地元の「三郷市PR大使」を務めるなど、地域との関わりも深めている。
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