職場のかんたんメンタルヘルス

コラム

「クレーム対応の秘訣」


 どのような職場であっても、さまざまなトラブルやクレームに見舞われることがあると思います。その対応や処理で心身が疲弊してしまうことも少なくありません。今回は、クレーム被害を最小限に抑える方法をお伝えします。
 クレームを訴える行為には、それに伴う感情が必ず存在します。意見、要求などに付随する「怒り」が原動力となることが多いですが、そもそも「怒り」は根本にある1次感情から派生した2次感情です。1次感情は、「悲しい」や「悔しい」などのつらさであったり、「心配」や「不安」といった困り事であったりします。
 例えば、家族が約束の時間に連絡してこないという時に「心配になる」のが1次感情で、心配しながら待っていて、やっと連絡があった時に「怒ってしまう」のが2次感情です。本来の心配という感情が、怒りに転じるのです。クレームの際、この表面上に現れる「怒り」を収めようとしがちですが、実は、根底にある「心配した」気持ちを受け取らなければ収まりません。表面上の怒りではなく、奥に潜む本来の感情にアプローチすることが大切です。
 そこで必要なのが、1次感情を知ることですが、そのためには、相手に話をしてもらうことが必要です。その際、傾聴スキルが役に立ちます。
 基本は、相手に分かるように、はっきりと深くうなずき、言葉で相づちを打つことによって聞く態勢があると示すこと、そして、相手の訴えを言葉で受け止めて、理解したと言葉で伝えることが重要です。単純なことですが、これがとても大切です。
 謝罪の言葉や説明も大事ですが、クレームを言ってきた側は、申し出た気持ちや思いをきちんと齟齬(そご)なく受け止めてもらうことを望んでいるケースが多く、その気持ちに対しての理解を示すことができれば、安心感と納得感につながります。気持ちが受け止められたかどうかが、それ以降の状況に大きな影響を及ぼすので、まずは、相手の気持ちに寄り添う対応に徹してください。
 しかし、それでも収まらないことがあるかと思います。「誠意を見せろ」など、何に対してどのようなことを求めているのか具体的に分からない、無理な要求を強いてくる、また、暴言や暴力により話し合いにならない場合は、脅迫などの違法行為に当たります。警察への通報を速やかに行うことも含め、毅然(きぜん)とした態度で対応することも必要です。

日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

 

◇大野 萌子/おおの・もえこ

 法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上を対象に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書にシリーズ51万部超『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか多数。