気象予報士×税理士 藤富郷のクラウドな話

コラム

「桜堤をいつまでも」


 この時期に一斉に咲く桜。公園やお城、お寺、街道沿いなど、桜の名所がさまざまな場所にありますね。その中で私が好きなのは、堤防に咲く桜(桜堤)です。ちょうど一昨年前に訪れた宮城県の「白石川堤一目千本桜」は、白石川の堤防に約8kmにわたり千本以上の桜並木が続いています。満開に咲く薄紅色の桜の背景には、青空と雪をかぶった蔵王連峰がそびえ立ち、手前には東北本線の貨物列車が走るという文句なしの絶景です。
 また、桜堤として有名なものに「隅田川の桜」があります。江戸時代に、徳川吉宗が、それまで数本しかなかった隅田川の堤防に100本もの桜を植えました。これには目的があり、お花見の人々が堤防を歩くことで土が踏み固められ、強い堤防になると考えたからです。これに倣ってか戦後も、水害後の復旧でつくられた堤防に桜が植えられ、各地で桜堤が広がっていきました。
 ところが近年、この桜堤に課題が出てきています。それは桜の老朽化です。ソメイヨシノは、寿命が約60年と比較的短く、その60年を超える木が多くなってきているのです。
 ある河川国道事務所の調査によると、老朽化した木が伐採された際、根の周辺の土が非常に軟らかくなっており、根も腐って空洞になっていることが分かりました。これでは、川の水位が上昇した場合、堤防が崩れ、水が漏れて被害が発生する可能性があります。
 桜堤を残すためには、枯れた木を植え替える必要がありますが、防災の観点から今はできなくなっています。1997年の河川法改正により、堤防に新たに木が植えられなくなりました。堤防の一番の目的は、水害から命と生活を守ることであり、治水に影響が出ない必要があるからです。
 今後、桜の木が枯れ続けると桜堤がなくなってしまうことになりますが、観光の目玉や、地域の誇りでもある桜並木は、なんとか残したいと皆が願っています。この桜堤を残していくためには、まずは桜を丁寧に手入れし、長生きさせることが大切です。もう一つは、堤防の幅を広げ、新しく広がった部分に桜の木を植えることです。治水に影響の出ない部分に植えることは問題がなく、今の桜が枯れても、次世代の桜堤を残すことができます。
 早咲きで有名な静岡の河津川沿いの河津桜堤では、まさにこの取り組みがされています。堤防を広げて新しい桜を植え、観光資源を残す計画が、行政と地域が一体となって進められており、10年、20年、30年先を見据えたプランになっています。
 防災を考慮しながらも、日本の春の景色を守る取り組みを諦めず、これからも桜堤を末永く残していきたいですね。

気象予報士兼税理士

藤富 郷

◇藤富 郷/ふじとみ・ごう

 気象予報士、税理士。埼玉県三郷市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。大学院在学中に気象予報士に登録。日本テレビ「スッキリ」に気象キャスターとして出演しながら税理士試験に合格し、2016年に開業。21年に越谷税務署長表彰受賞。趣味の鉄道では、鉄道イベント出演や時刻表、鉄道模型雑誌にコラムを寄稿。プログラミングやダムにも造詣が深く、”複業”として得意を組み合わせて幅広く活躍中。地元の「三郷市PR大使」を務めるなど、地域との関わりも深めている。