気象予報士×税理士 藤富郷のクラウドな話「ロマンあふれる分水界」

コラム

 私が大学生の頃のこと。鉄道で旅をしながら、優雅に流れる川を車窓から眺めていました。初めは水が列車の後ろの方に向かって流れていましたが、あるトンネルを抜けると流れが前方に向かっていると気が付きました。とても驚きましたが、これが「分水界」を知るきっかけになりました。

 分水界とは、水が異なる川に流れ込む分かれ目のことで、山の稜線に沿っていることが多く、「分水嶺(れい)」ともいわれます。トンネルをくぐって流れが変わったのは、分水界を越えて違う川になっていたからです。

 その後、もっと分水界を調べると、太平洋側と日本海側の境目を「中央分水界」と呼ぶことが分かりました。さらに、中央分水界は山の上だけでなく、歩いて行けるまち中にもあると分かり、訪れてみたのが「水分れ(みわかれ)」です。兵庫県の福知山線・石生駅の近くにあり、本州一標高の低い中央分水界です。公園としても整備されており、実際に川の分かれ目を見ることができます。その日はちょうど雨が降っていたので、同じ雨でも違う海域に流れ込むと思うとわくわくしました。

 そのほかにも、気軽に見られる中央分水界があります。長野県の小海線・野辺山駅付近では、JR最高標高地点がちょうど中央分水界になります。広島県の芸備線・向原駅辺りには、水が分かれる気持ちを表した「泣き別れ」と名付けられた境もあります。山形県の陸羽東線・堺田駅は中央分水界のそばにあることで、まさに駅名がその意味を表しているといわれています。

 中央分水界は、水の流れを変えるだけでなく、気象風景を変える境目でもあります。川端康成の『雪国』の冒頭「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」でも知られる上越線の清水トンネルは、利根川と信濃川を分ける中央分水界である谷川岳を貫いています。そのため、トンネルの入り口と出口では、まったく違った風景を感じさせます。現在の清水トンネルは、東京方面の上り線のみとなりましたので、残念ながら『雪国』のような景色を見ることはできなくなりました。

 同じところに降った雨が、わずかにずれるだけで違った川に流れ込み、太平洋と日本海に分かれるなんて、ロマンがありますよね。お近くの分水界を探してみて、一度訪れてみるのもいいですね。

気象予報士兼税理士 藤富 郷
◇藤富 郷/ふじとみ・ごう

気象予報士、税理士。埼玉県三郷市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。
大学院在学中に気象予報士に登録。日本テレビ「スッキリ」に気象キャスターとして
出演しながら税理士試験に合格し、2016年に開業。21年に越谷税務署長表彰受
賞。趣味の鉄道では、鉄道イベント出演や時刻表、鉄道模型雑誌にコラムを寄稿。プ
ログラミングやダムにも造詣が深く、“複業”として得意を組み合わせて幅広く活躍
中。地元の「三郷市PR大使」を務めるなど、地域との関わりも深めている。