ITを事例からひも解く「給与計算時期の業務負荷、どう解消する?」

コラム

 本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。

 総務・経理部門では、締めから支払い時期に業務が集中します。負荷を抑えて効率化するために、ITはどのように活用できるでしょうか。多様な勤務体制を取る医療法人の取り組みを「COMPASS ONLINE」から転載します(記載内容は2022年夏時点のものです)。

<会社概要> 医療法人社団 桜仁会 さくらニューロクリニック 富山県富山市下新本町3-5 設立:1973年従業員数:約50人事業内容:医療(一般内科/脳神経内科・外科/心療内科/精神科/頭痛外来)、訪問看護サービス、精神科デイケア URL:https://www.toyamasakura.com/

「頭が痛い」といっても原因は一つではなく、どこの診療科で見てもらえばよいか悩ましいものだ。富山県富山市の医療法人社団桜仁会は、「脳とこころの総合医療」をかかげ、頭痛外来など5科からなる内科・脳神経クリニック、訪問看護サービス、グループホーム精神科デイケアと事業を展開し、地域の医療を支えている。

 約50人のスタッフは、事業の特性から職種は多様で、業務内容に対応したシフト勤務や希望に応じた1日6時間などの時短勤務もある。給与計算にはきめ細かいルール設定を行っていた。

 それゆえ、毎月の給与支払い業務には多くの時間を要し、複雑な処理が多いと仕事が属人化しやすいという課題があった。ITツールの導入費用の一部を国が補助するIT導入補助金が実施されていたこともあり、2021年に勤怠・給与分野を中心としたバックオフィスのデジタル化に踏み出した。

 同県内でITツールや機器の販売・サポートサービスを提供する山辺事務機(本社・高岡市)のアドバイスを受けながら、オービックビジネスコンサルタントの「奉行勤怠管理クラウド」「シフト管理for奉行」「給与奉行クラウド」「給与明細電子化クラウド」を導入した。

 シフト決定から勤怠の記録(ICカードを利用)、休暇申請や承認などをシステム上で行い、勤怠のデータは入力作業なしで給与ソフトに連動(システム間でデータを渡す)できるようになった。毎月の給与明細書は専用アプリを通じてペーパーレスで発行している。

 業務の進め方を変える際、現場は不安や戸惑いを感じることも多い。プロジェクト推進にあたり留意した点について、総務担当の横田里美氏は次のように振り返る。

 「特に給与はお金のことですし、少しでも不信感がないようにと心がけました。『なんでも聞いてください』と声がけし、スマホの操作をはじめ、電子化した給与明細のデータ保存や印刷方法などを一つひとつ説明していきました」

 同社団のきめ細かい給与計算ルールをシステムに反映させる際は、山辺事務機のサポートを受けることで、滞りなく進められたという。

 勤怠管理、給与計算業務の効率化により、総務では捻出できた時間を現場のサポートや次の取り組みに使うことができ、組織全体の最適化が図られている。

IT経営マガジン「COMPASS」編集長
◇石原 由美子/いしはら・ゆみこ

アップコンパス代表。教材編集や講師業を経て、情報処理技術者試験の書籍編集、モバイル分野の雑誌編集を担当した後、IT経営マガジン「COMPASS」https://www.compass-it.jp/の編集に携わる。中小企業支援機関・支援者と連携しながら、中小企業が主体となる等身大のIT活用をテーマに、全国の事例を取材し、その本質を伝えている。各地の商工会議所においても、IT活用事例・DX入門等のセミナーを担当。